About

Alterspace (オルタースペース)の実践 

言葉ではいくらでも拡げていくことができるアイディア、歩いているときに思いつく一瞬の閃きや、会話のなかで膨らんで行く夢想を、どう実践できるのか。 それを試すことを許してくれたのがアサヒ・アートスクエアでした。私は、約1年をかけて、いろいろなところにでかけていき、たくさんの人との会話から、言葉によって「オルタースペース」という存在しない架空の空間を拡張していきました。 実際の空間が作り出されるまで、たくさんのアイディアがこぼれ落ちたり、膨らんだ妄想が潰れてしまったものもあります。でもそれらはいつかこの架空の公園のような、移動式サーカスのような、四次元ポケットのような、この「オルタースペース」で実現できるはずです。このプロジェクトは、会期のはじまる前から、徐々に始まっていました。そして会期の終わった後も移動と寄生を繰り返し、時には誰かの家で、誰かのカバンの中で、時には海を越えて、時には紙の上で「オルタースペース」がさまざまな場に接続し、その場そのものに変化をもたらし、去って行きます。そこには何かの変化が残るはずで、そういう意味をこめ、Alter(変化する)space(場)と名付けました。この発明の素晴らしいところは、アートスペースを誰でもすぐに始めることができるところです。オルタースペースの第一回目は、私自身の展覧会の試み、中村土光による日替わりの展覧会、近藤恵介の12ヶ月のための絵画という作家自身による新しい展示形式の試み、永岡大輔の言葉による試み、東アジアからゲストを招きトークイベントや対話を行うという盛りだくさんな内容になりました。 宮沢賢治の「虔十公園林」のなかで、虔十(けんじゅう)は杉の木を700本も植えたら良いと思いつき、実際にみんなに笑われながら杉の木を植えます。虔十は、「雨の中の青い藪を見てはよろこんで目をパチパチさせ青ぞらをどこまでも翔けて行く鷹を見付けてははねあがって手をたゝいてみんなに知らせ」るのですが、そんな自然の美しさに思わず笑みがこぼれてしまう虔十を子供たちがばかにするので、はあはあと息だけついて笑いをごまかしています。 ここで私は思うのですが、虔十が自然と対峙し、その素晴らしさをにやにやと笑ってしまい、それをどんなに馬鹿にされても、杉の木を700本も植えるまでの実践があるということです。独自の方法で物の本質に向き合い、思考を重ね、真摯に実践に向き合う姿は、例えそれが人に馬鹿にされ、笑われてもとてもすがすがしい。オルタースペースの実践は、700本の杉の木を植える大胆さと真摯さ、そして杉の木が育たずに枝を切ってしまってもなお、子供たちの遊び場となるような、多層的な意味を含む実践の場にしたい。 (水田紗弥子)

Statement

オープン・スクエア・プロジェクト2014
Alterspace - 変化する、仮設のアートスペース

これまで創ってきた展覧会やリサーチを、さらに拡張させ、継続した思考と実践のできる場として「アートスペース」を立ち上げます。美術館やギャラリーでは無い、またオルタナティプ・スペースという代替の提案でも無い、場所に依拠しない変化し続ける仮設のスペースの創出が目的です。実験的な場、次世代のオルタナティブ・スペースの構想の第一歩でもあり、展覧会という一回限りで終わってしまう場を、継続した場として機能させ、対話や実験的なことができる場を作りたい、また、もっと柔軟に海外の(主にアジアの)アーティストやオルタナティブ・スペースと繋がりたいという、主に二つの動機からAlterspaceの構想は始まりました。そこで今回は、アサヒ・アートスクエアを拠点に実験的な展覧会を行っているグループやアーティストを紹介します。また、中国と韓国のアーティストの作品も紹介し、トークイベントを開催し対話することで、Alterspaceの第一歩とします。この企画は、さまざまな隙間を縫い、場に寄生しながら、場そのものを変化させながら、長く継続しオルタナティブ・スペースやアーティスト・ラン・スペース、のように「オルタースペース」という名称が定着した頃終了したいと思います。

開催概要

会期|2014年1月11日(土)- 2月2日(日)
会場|アサヒ・アートスクエア[東京都墨田区吾妻橋1-23-1スーパードライホール4F]
開館時間|15:00-21:30  休館日|火曜日、1月26日(日)
料金 入場無料(イベント時は有料)
主催|アサヒ・アートスクエア
協賛|アサヒビール株式会社
お問合せ アサヒ・アートスクエア Tel. 090-9118-5171 E-mail aas@arts-npo.org http://asahiartsquare.org/

オープン・スクエア・プロジェクトとは

「全面開放」されたアサヒ・アートスクエアのユニークな空間を創造的に活用し、これまでにない企画や作品の発表を行うことで、アサヒ・アートスクエアの新たな姿を提示するのが本プロジェクトです。2011年のスタートから3回目となる今回は、インディペンデント・キュレーターの水田紗弥子を公募で選出し、展覧会「Alterspace ─ 変化する、仮設のアートスペース」を開催します。

企画者

水田紗弥子[みずた・さやこ]

2006 年武蔵野美術大学大学院芸術文化政策コース修了。若手アーティスト支援の仕事を経て、フリーランスのキュレーターとして活動。主な展覧会企画に「入る旅人 出る旅人 vol.1-4」(2012年)、「皮膚と地図U─ 記憶と時間への近づき方」(2011年)、「皮膚と地図─ 4名のアーティストによる身体と知覚への試み」(あいちトリエンナーレ入選企画、2010年)がある。アート専門インターネット放送局「comos-tv」の企画・運営にも関わる。